ブルー・ムーン


ブルームーン

月と女性と「カクテル言葉」

バーでは、BGMにジャズが流れていることが多い。こだわる店はアナログ音源を自前のオーディオセットで聞かせたりもするが、そうでなくても現代では有線でいろんな曲が流れてくる。
「おっ『ムーン・リバー』だね」
もちろん、オードリーが歌ったオリジナルではないが、いい曲であることに間違いはない。
「そう言えば、この間の『スーパームーン』はご覧になりました?」
マスターが問い掛けて来た。秋と言えば中秋の名月、最近では満月の時に地球と最接近する「スーパームーン」の方が有名か。
「という事で、ブルー・ムーンなどいかがですか?」
薄紫の色が慎ましくも鮮やかで、意外と可愛い印象である。
「カクテルにはそれぞれ『カクテル言葉』というのがあるんだよね」
「そうですね、確か、ブルー・ムーンの場合は…」
なんとマスターによれば「ブルー・ムーン」は2つのカクテル言葉を持っているらしい。一つは「完全なる愛」、もう一つは「叶わぬ恋」。
「これ、正反対の意味じゃないか」
「女性にプレゼントされたら困っちゃいますね(笑)」
 月は地球を1周する間に、1回だけ自転する。つまり、いつも同じ面を地球に向けて、裏側は見せない。そう考えるとピッタリのカクテル言葉かもしれない。
「そう言えば昔から、男は太陽、女は月って言いますよね」
オレとマスターは、二人してこの店のアイドルである、若い女性バーテンダーに視線を移した。
「な、なんですか?」
戸惑う彼女を照らすように、窓の外には美しい月が浮かんでいた。